意地悪な俺様上司と秘密の同居生活~異性には無関心だと思っていた彼だけど、結構独占欲強めの人でした~
「七海、荷物は片付いたか?」

 暫くして、ノック音と共に日吉さんが声を掛けてきた。

「はい、その……ひとまず片付きました」

 私がドアを開けて問い掛けに答えると、

「そうか。それじゃあ風呂入って来い。タオルは用意しておいたから使ってくれ」

 それだけ言ってリビングへ戻ろうとする日吉さん。

「あの、日吉さん」

 私はそんな彼を呼び止め、

「ありがとうございました。あの時すぐに来てくれて……対応も全て、してくれて……」

 電話をしたらすぐ来てくれた事、警察やら各方面への対応を全てしてくれた事への感謝の言葉を口にすると、

「構わねぇよ。何より、侵入者と鉢合わせにならなくて良かった。ただ、それだけだ」

 フッと笑みを浮かべ私の頭をポンと撫でてくれた。

 そんな日吉さんの言動は、私の鼓動を酷く騒がせる。

(何だろ……日吉さんって、意地悪なとこも多いけど、こういう風に優しい時もあって、調子狂う……)

 ドキドキと大きな音を立てる鼓動に気付かれたくない私は、

「あの、それじゃあお風呂、お先に使わせていただきます!」

 ドアのすぐ側の棚にお風呂に行く用の準備を整えておいた私はそれをを持つと、逃げるようにお風呂場へ向かって行った。

 翌朝、いつも通りに起床して部屋で支度を整えていると、

「七海、起きてるか?」

 日吉さんが私を起こしに来る。

「おはようございます、日吉さん」
「おはよう、朝飯食うだろ? コーヒーとトーストだけどいいか?」
「はい。あの、すみません、朝ご飯まで……」
「別に、自分の分のついでだから手間でもねぇし、気にしなくていい。それよりも、お前は今日は仕事休んでいいぞ」
「え?」
「昨日の事で色々疲れてるだろ? 昨日社長に報告した時、一日くらい休んでも問題ねぇって言ってたからな、今日は一日家でゆっくりしてろ。いいな?」

 私は出勤する気でいたのだけど、日吉さんが一日家でゆっくりしていろと言うので休む事になってしまい、朝食を共に食べた後で彼を見送った私は今後について考えてみる事にした。
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