意地悪な俺様上司と秘密の同居生活~異性には無関心だと思っていた彼だけど、結構独占欲強めの人でした~
 問題の日曜日、会場であるショッピングモールへ着いた私は再度日吉さんから注意をされた。

「おい、分かってんだろうけど、くれぐれも気を付けろよ?」
「はい、分かってます」

 そう返事はしたけど、いざこの場に来るとやっぱり怖くなる。

 でも、自分から言い出した事だから今更後にも引けず、とにかく一人にならないよう気をつけながら仕事をこなしていたのだけど、どうしても一人になる場面は訪れた。

「七海さん、悪いんだけど音響さんのところに行ってもう少し音を上げるように伝えて来てくれる? 相手のインカムが故障してるみたいなの」
「あ、はい、分かりました」

 ステージからショーの行方を見守っていた先輩社員から音響担当の社員さんへの伝言を頼まれた私は急いで音響室へと向かう事に。

 屋上の裏手にあるけど、他に頼める社員も共に行ってくれる人も居ない状況なので、不安はあるものの人混みから遠ざかり、人気の無い方へ走っていたさなか、

「あの、すみません」

 突如後ろから声を掛けられ腕を掴まれた私は反射的に振り返りながら「はい?」と返事をする。

 そして、後ろに居る人物を目にしたその瞬間、

「七海さん、ようやく会えた、一人になるのずっと待ってたよ」
「あ、あなたは……」

 私の腕を掴むその人が、前のイベントで対応し、それ以降私をずっと付け狙っていたと見られている男の人だと気付いた。

「ちょっと、こっちに来てよ? 話があるんだ。ね? 大人しくしていてくれれば危害は加えないって約束するから」
「……っ」

 声を上げようとしたけど、今まさにヒーローショーの真っ最中で客からの歓声の方が大きくて聞こえないだろうし、何よりも、相手の男の人の手に小型のナイフが握られていた事で、私は声を出す事も腕を振りほどいて逃げる事も出来なくなってしまったのだ。
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