意地悪な俺様上司と秘密の同居生活~異性には無関心だと思っていた彼だけど、結構独占欲強めの人でした~
「あの、それじゃあ……眠くなるまで、傍に居てください」
「ああ。じゃあ何か映画でも観るか」
「はい」
「何か飲み物用意する。何が良い?」
「えっと……それじゃあ、ミルクティーが良いです」
「了解。そんじゃ七海は映画選んどいて。俺は何でも良いから」
「分かりました」

 そして日吉さんは飲み物を用意する為に私から離れると、キッチンへ行きケトルでお湯を沸かしている間にミルクティーとコーヒーを準備していく。

 私はというと、ソファーに座ったままテレビのリモコンを手に、これから観る映画を選んでいた。

 暫くして、飲み物とクッキーをお皿に盛り付けた日吉さんが戻って来て再び隣に腰を下ろした。

「何観るか決まったか?」
「えっと、これにしようかと」
「ああ、二年くらい前に人気のあった恋愛映画か」
「もしかして日吉さん、観たことありました?」
「あー、まあ、連れがどうしてもって言って無理矢理……けど、あの時眠くて途中から寝てたから、内容良く覚えてねぇんだよな」
「そうですよね、日吉さん、恋愛に興味無いのに恋愛映画なんてもっと興味無いですよね。それに、観たことあるなら他のにします」

 言って私がもう一度映画を選び直そうとリモコン操作をしようとすると、

「いや、いい。俺も気になったから、それ観るぞ」

 半ば強引に私からリモコンを奪い取ると、そのま再生ボタンを押してしまい、映画が始まってしまった。

「ほら、始まったぞ」
「本当に良かったんですか?」
「ああ」

 日吉さんが良いならと、私はソファーの背もたれに寄りかかると、テレビ画面に視線を移した。

 映画は二年前の人気ナンバーワン作品で、人気の恋愛小説を実写化したもの。

 恋人がいる二人がある事をきっかけに出逢い、惹かれ、いけないと葛藤しつつも密会を続けた末、付き合っていた相手との別れを選び、最後は好き合っている二人が結ばれるという、これだけ見ると浮気がテーマ? と思うような何とも言えない内容なのだけど、恋人がいると言っても既に気持ちが冷めつつあり、情だけで付き合い続けていたのと、価値観のズレが生じて気持ちが冷めていたという間柄で互いの為にも別れを選んだ方がいい環境だった事、主演の二人はどちらも新人だったのだけど、演技に見えない程に自然で、入り込めた事が特に人気の理由だった。

 冒頭のシーンが映し出され暫くはそれを注視していたのだけど、ふと、私の脳裏にある事が浮かんだ。

(そういえば、日吉さん……この映画、誰と観に行ったんだろ?)

 連れと言っていたけど、それは当時付き合っていた彼女という事なのか、それとも、知り合った人と観に行ったのか、考えれば考える程、胸がモヤついていく。
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