意地悪な俺様上司と秘密の同居生活~異性には無関心だと思っていた彼だけど、結構独占欲強めの人でした~
 半ば強引にバスに乗せられた私は、これまた強引に空いている二人がけの椅子に座らされる。

 バスの座席って結構狭いから、タクシー以上に緊張するんですけど……なんて一人焦る私をよそに、日吉さんは朝同様相変わらずこちらを見ずに窓の外を眺めていた。

 バスに乗れたのはラッキーだったけれど、何故こんな事に。しかもご飯まで一緒に食べる事になるなんて。

 そう思いながら、私はある事に気付く。

 もしかしたら日吉さんは歩いて駅まで行くという強情な私の為に、業務命令と称してご飯に誘ったのではないのかと。

(……そっか、もしかしたら、そうかもしれない)

 ちょっと無愛想で強引なところもあるけど、根は優しい人なんだと思う。そうでなかったら、朝だって見ず知らず私を助けたりしなかっただろうし、いくら教育係とはいえ私をバスに乗せる為にご飯に誘ったりしないだろう。

 こんな事なら素直にお金を借りてバスに乗っていれば良かったなと後悔しつつ、私たちを乗せたバスは駅へ向かって走っていった。


「本当に、何から何まですみません」
「気にしてないでいいって言ったろ? 飯は俺が誘ったんだから、気にしないで好きなの頼めよ」
「ありがとうございます」

 バスを降り、駅前にある定食屋へ入った私たち。

 誘われてやって来たものの、お金のない私は奢られる気満々のように思われていないか不安になるし、申し訳なくてとても料理を選ぶ気になれない。

 そんな私の思いを悟ったらしい日吉さんが気にするなと言ってくれたので、これ以上遠慮をすれば逆に迷惑がかかると感じ、私は素直にお礼を言ってメニューに目を通していく。

 けど、そもそも上司の人とご飯なんて初めての経験で、何を食べたらいいのか分からない私は当たり障りなく、日吉さんと同じく『ハンバーグ定食』を頼む事にした。
< 8 / 49 >

この作品をシェア

pagetop