僕に依存してほしい。【ピュアBL】
 歩夢が通っている塾のビルの近くに、俺がバイトしているケーキ屋がある。実はこの場所を選んだのは、時間が合えば塾終わりの歩夢と一緒に帰れると思ったからだ。

 だって塾帰りの夜道は危険で、歩夢が心配だったから。

 今日は12月29日。塾は年末年始休みっぽいから多分今年最後。お疲れ様の意味も込めて、歩夢の大好きなうちの店のチーズケーキを持ちながら、歩夢の塾が終わるのを待っていた。

 通り過ぎる生徒たちが毎回こっちをチラチラ見てくる。自分で言うのもなんだけど、結構周りからはカッコイイと言われている。そしてよくチャラそうとも言われていて、ここにいるのが場違いだから俺は余計に視線を浴びてるんだろう。

 他の生徒たちはどんどん出てくるのに歩夢は出てこない。ビルの中をちらっと覗いてみた。

「なっ……」

 こないだのイケメンと至近距離でスマホを見せあっている。しかも歩夢は笑顔。

 秘密事はするし、イケメンとこんな感じだし……。

 胸の辺りがもやもやとした。
 こんなもやもやは初めてだ。

 苦しい……。

 ふたりを見ていると、心が痛い。
 この痛さを感じる現象はなんだろう……。

 考えながら中にいる歩夢を見つめていると、視線を感じたのかこっちをみた。

 この心の乱れを歩夢に見せてはいけない。歩夢にとって、余裕がある素敵なお兄さんでありたい。

――あぁ、でも心が……。

 必死に平常心を装い「お疲れ様!」と右手を上げ軽く手を振った。すると歩夢が手を振り返してくれた。


 

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