僕に依存してほしい。【ピュアBL】
 微笑みながら小走りで歩夢が走ってきた。いつも俺の姿を見つけた時はこんな感じだ。

「よぅ、お疲れ様」
「怜くんもバイトお疲れ様!」

小柄でふわっとしたポメラニアンみたいな可愛い歩夢。

 いつも思う、歩夢は誰よりも可愛い。

「歩夢くん、またね」
「うん。悠生くん、帰ったら連絡するね!」

 歩夢の横にいたイケメンが歩夢に手を振り、歩夢もイケメンに手を振り返す。今までのふたりはそんな親しげじゃなかったのに。急に接近した感じだ。

「あの友達と、どんな話するんだ?」
「えっ、どんなって……。怜くんに言えないこともあるよ」

 なぜか歩夢は照れくさそうに視線をそらしてきた。

 いつも俺と一緒にいて、一番近くにいたはずの歩夢と心の距離を感じてきた。
 俺が触れてはいけない、歩夢のプライベートゾーンが生まれてしまったのか。これ以上聞いちゃいけない気もしてきた。

「そういえば、明後日年越しそば食べに来るしょ?」
「うん、行くよ!」

 微笑みながらそう言った歩夢の姿を見て安堵した。まだ一番近くにいるのは俺だ。

 小さい頃からずっと、年末は歩夢の家族と一緒に過ごしている。

 ふと思う。歩夢は俺の隣にいるのが当たり前だと思っていた。だけどいつか離れてしまうのか? 誰か別の人が歩夢の隣に……例えばさっき歩夢と親しげに話をしていた悠生とかいう名前のイケメンだとか。

 俺以外のやつが歩夢の隣にいるなんて、考えるだけでしんど。
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