僕に依存してほしい。【ピュアBL】
「家に帰ろっか。歩夢くん、家まで送るよ。断るのは、なしね」

 悠生くんにとって、神社から僕の家を通って悠生くんの家に帰るのは、遠回りになっちゃうから断ろうとした。けれど断るのは、なしって……。

「ありがとう。悠生くんには色々やってもらってるよね、何か恩返しみたいのが出来たらいんだけど……」
「じゃあさ、手を繋がない?」
「手?」
「うん、手が寒いから。恩返しはそれでいいよ」

 返事を待たないで、僕の目の前に手を出した悠生くん。ちょっと迷ったけれど、その手に触れた。すると手をぎゅっと握られた。僕の胸がキュンとなる。

「悠生くんは恋人と手を繋いだり、慣れているの?」
「……慣れているわけないよ。だって恋人なんていたことないし、好きな人と手を繋いだのが初めてだし」

 悠生くんは、はにかんだ。

 僕は、好きな人……怜くんと最後に手を繋いだのは、小学生の時。たしか高学年の頃だったかな。手を繋いだっていうよりも引っ張られた。雪が沢山降っていた季節。除雪されて端に寄せられた雪。元々狭かったのにそれのせいで更に狭くなった道を歩いていたら、後ろから車がきた。その時に「危ない!」って手を引っ張られた。

 これは手を繋いだって言わないのかな?

 過去を思い出しながら雪道を歩いていると、怜くんとの思い出と同じように悠生くんが僕の手を引っ張ってきた。

 引っ張られた直後、車がすれすれのところを通って行った。

「あ、ごめんね! 手、思い切り引っ張っちゃったけど大丈夫だった?」

 怜くんの時と比べちゃう。
 怜くんは僕の手を引っ張ったあと「後ろも気にしろよ」って強めの口調で言い、ぱっと僕の手を離して僕の前を歩いた。

 悠生くんと繋がっている手を、無言でぎゅっとした。

 雪がさらりと降っていて、寒い日だった。


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