僕に依存してほしい。【ピュアBL】
 ホテルに着いた。
 スマホの時計を確認すると15時。

 今日泊まるホテルは山の中にあって、ちょっと古めなホテル。くすんだ白い色をしていて結構大きい。

 幼稚園に通っていたころから家族ごとに泊まる部屋を分けていた。けれど歩夢が中学になった時だったか「子供たち一緒の部屋にした方が子供たちは楽しめるかもね」って親が言って。歩夢と俺の両親それぞれと、俺と歩夢の部屋、3部屋に分かれるようになった。

 今回俺たちの部屋は2人じゃなくて、あいつも含めての3人。

 部屋は5階にある和室だった。部屋の入口すぐ近くにトイレとかがあって、進むと低いテーブルが置いてある畳の部屋。そして窓側は木の床になっていて、背の高いテーブルと肘掛けつきの椅子がふたつ向かい合わせに置いてあった。

 部屋は古い独特の匂いがする。ここのホテルには何回か泊まりに来ていて、その匂いを昔、歩夢が「怜くんっぽい匂いがしてこの部屋好きかも」って言っていた。だから俺もこういう匂いが好きになった。

 夕ご飯はレストランでバイキング。時間が来るまで部屋で休むことにした。歩夢たちふたりは窓側にある椅子に座りながらスマホのゲームをしていた。俺は畳のとこにある低いテーブルの座椅子に腰掛けスマホを見ている。

 いつもみたいにダンス動画をながしているけど、全く集中できない。俺の視線はスマホを通らないで歩夢たちの方へ行く。

「ここのクエスト、火系の敵多いらしいから、水系の武器防具で行けば強いと思う。だから歩夢くんの装備は――」

 俺にはさっぱり分からないゲームの単語とか出てきて、会話を聞いていてもよく分からない。

 このまま部屋にいるのが苦痛だった。ひとりになりたい気分になって部屋を出て、ひとりで温泉に入った。それでも夕食の時間までまだ時間がある。お土産売り場の近くにあった、古めのゲームがいくつか置いてあるコーナーでUFOキャッチャーとかして、適当に時間をつぶした。
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