僕に依存してほしい。【ピュアBL】
 今まで見たことのないすごく険しい顔、そして早さでそれを奪っていった。

「見た? 見た? 見てないよね?」

 顔が真っ赤になる歩夢。

 見てないって言った方がいいのか?
 他の、どうでもいい内容が書かれていたなら見てないふりが出来た。

――でも、言葉の真相が気になりすぎた。

「ごめん、見た……」

 歩夢は、はっとした顔をして後ろを向いた。耳まで真っ赤だ。そして、泣きだした。

「……」

「歩夢、また泣いてるの?」

 〝また〟って言ったのは、旅行中の夜も泣いていたから。本人は隠してたんだと思うけど、俺とあいつが話をしていた場所にまで歩夢の鼻水をすする音と泣く声が聞こえてきた。あいつがその時、小声でなぜか「先輩のせいですよ」って言ってきた。それに「鈍感すぎですね」とも。

「ごめんね、ごめんなさい。変なこと書いて、本当にごめん。気にしなくてもいいから」

 後ろを向きながら呪文のように謝る歩夢。

「歩夢、落ち着けって!」

 歩夢の前に回り込んで歩夢の顔をしっかりと見つめた。

「あのね、大丈夫だから。もう『 怜くんが僕に依存して』なんて思わないから。内容、忘れて?」
「……いや、絶対に忘れられない内容なんだけど」
「忘れてほしい……もう、大丈夫だから。怜くん、旅行の日に聞いたと思うんだけど。あの、悠生くんとお試しで付き合ってた話」
「あぁ、聞いた」
「あれね、正式に付き合い始めたから、さっき」
「はっ? さっきって、まだ2日あるじゃん」
「悠生くんと恋人になったから。もう怜くんがスマホをずっと見てても気にしないし、大丈夫だから」

 ……ん? スマホ?

 はてなが浮かんできた。
 
「なんでスマホ?」


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