貴方の声が、心が聴きたい



「ねえ、なんであの茶髪を庇ったの。好きなの」


保健室につくなり、そんなようなことを聞いてきた遥人さん。


「いえ、別にそういうわけじゃ……」

「それに、『澪ちゃん』ってなに? ふざけてんの。他の男と仲良くすんなっつったよね」

「えっ、別に仲良くしてるつもりは………」

「おしおきって、言ったよね」


ダメだ、全然聞いてない。


「しかも、こんな怪我してさぁ。どれだけ俺のこと怒らせる気?」


そして、私をベッドにおろしながら、


「それとも、おしおきしてほしいの?」


そう言って冷たい目で見られる。


「ちがっ………んっ」


突然のキス。


「ごめっ、なさ……ぃ。はるとさ、ん………」

「へえ……。そんなに素直に謝るのは、こういうことしてほしくないってこと?」
 
「んっ、そうじゃ、なくてっ」


遥人さんの手が体育着のすそにかかったとき……

ガラッ


「保健室で盛んな、クソガキ」


若い女の人の声がして、何かが遥人さんの頭に振り下ろされた。


「痛っ………。おい、ふざけんなクソババア」


振り下ろされたのはよく教員が持っているようなバインダーだった。


「えっと………。白崎先生…………?」

「あぁ、澪ちゃんか。怪我?」

「えっと」


保健医の白崎先生である。

その白崎先生のとった行動に衝撃が隠せない。


「おい、無視すんなよ。クソババア。謝れ」

「おい、遥人。春高の美姫とも謳われたこの叔母に『クソババア』だと?」

「あ? 過去の栄光にすがってんじゃねえよ、ババア」


えーっと、え、白崎先生は遥人さんの叔母様?

私の頭は多くの情報で溢れかえり、何がなんだかわからない。


「遥人は教室戻れ。澪ちゃんは私が面倒見とくから」
< 13 / 23 >

この作品をシェア

pagetop