貴方の声が、心が聴きたい

“おしおき”

社会科準備室の奥の方においてあった長ソファに押し倒される。

沈んだときに、少しばかりホコリが舞った。


「ちっ、汚ねぇな」


そうぼやきながらも、遥人さんは手を止めない。

体育着がいとも簡単に捲られてしまった。


ひやりと、冷たい空気が体を伝う。


「口開けろ」

「口……?」

「いいから、早く」


どちらにせよ、私に拒否権はない。

微かに開くと、遥人さんの顔が近づいてきた。


そして、唇に冷たく柔らかい感触が触れた。

かと思えば、口の中にねじ込まれた遥人さんの舌。


「……んぅ、っ」

「はは、いい声で啼くじゃん」


思わずこぼれた声に、遥人さんが嬉しそうに反応する。


息ってどうやってしたっけ。
呼吸がうまく続かない。
だけど、私にこの人を押しのける権利なんてない。

酸素が回らずぼーっとしてきた頭でそんな事を考えていると、遥人さんの唇が離れた。


「ねぇ、ちゃんと呼吸の仕方覚えてね」


それを見計らったかのように大きく息を吸う私を見て、遥人さんは冷たく言った。


「それと、俺に応えてくんないわけ?」

「えっと、応える、ですか?」

「そうだよ。俺がキスしたとき、ちゃんと応えて。俺が舌絡めたら、同じようにして」


そして、また遥人さんの顔が近付いてくる。

覚悟をして目をつぶったが……
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