貴方の声が、心が聴きたい
ちゅ、と柔らかいものが触れたのは右瞼だった。


「……え」


掠れた声で呟きを漏らすと、遥人さんはまた悪い顔をした。


「期待しちゃった? また、ここにキスもらえること」


私の唇に親指で触れて遥人さんは言った。


「ゃ、期待、したわけじゃ……」

「うーそ。だって、耳赤くなってるよ」


低くて甘い声が耳に響く。

背筋がゾクゾクとした感覚に襲われる。


「ひゃ、ぁ……」

「ふはは、エロい声出すね。喋っただけだよ?」


そう言った遥人さんの手がキャミソールにかかる。


「やっぱり、澪は白くて美味しそうだね」


そして、次の瞬間には脇腹のあたりに噛みつかれていた。


「っ、ぅ……」


その痛みに思わず呻き声を漏らすと


「痛い? 痛いよね。これで、俺の存在を忘れない」


肌にクッキリと残った歯型を愛おしそうになぞって、遥人さんは呟いた。


そのとき───


「遥人、またサボ、リ…………え」


社会科準備室の扉が勢いよく開け放たれた。

入ってきたのは、都鹿先輩だった。


「えっと、もしかして澪ちゃん?」

「と、都鹿せんぱっ……」


目が合い、そして放たれた疑問に小さく首肯する。


「ねぇ、何見てんの、澪。誰が俺から目逸らしていいって言った?」


乱暴に遥人さんの方を向かされて唇同士が合わせられる。
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