貴方の声が、心が聴きたい
「遥人……。せめてさ、せめて学校はやめようよ。澪ちゃんとだと見つかったときにお前の立場最悪だよ」

「俺がどこで何しようとお前には関係ないだろ」

「あるんだよ。俺の立場考えて。お前とまともに喋れて、他の奴らとも喋れるのは俺だけなんだ。俺が問い詰められる」


なんだかんだいって余裕そうな都鹿先輩を見て、いつも通りのことだと理解する。

話している間も、遥人さんの顔は目の前だ。
吐息がかかってくすぐったい。


「とりあえず、澪ちゃんの上からどかない?」

「むりだけど」


ずっと自分の意見を押し通すつもりなのか、全くとりあう気のない遥人さんだったが……



「あぁ、そう。じゃあ遥人の中では澪ちゃんは性欲の捌け口ってだけなんだ。うわぁ、最低。大事にしてないなんて」

「……あ゙?」


都鹿先輩の言葉を聞いて青筋を立てた遥人さんは私の上からどき、かわりに都鹿先輩の胸ぐらを掴んだ。


「澪は、今までの何よりも特別だ。大事にしてるに決まってんだろ?」

「じゃあ結婚もしてないのに身体の関係だけ持つなよ」

「それとこれとは関係ねえ」

「“する”優しさなんて優しさじゃない。“しない”優しさこそ、本当の優しさだ。するだけじゃ心は手に入らないよ」


都鹿先輩の言葉に、酷く胸を打たれた。

私の信条に近しいものを感じた。


苦々しい表情で遥人さんは都鹿先輩から手を離した。


「お前は、本当に昔からうざいな」


そして、独り言なのか、あまり大きくない声で言った。


「遥人は、昔から自分本位だよね」


それに対する都鹿先輩の返しは辛辣だ。
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