貴方の声が、心が聴きたい
「あのぉ、人いるんですけど……」

「だから? いいから早くしてよ。それとも俺とサボって、楽しくてイケナイコトでもする? 俺は男で澪は女。やろうと思えば何だってできちゃうんだから」


遥人さんは妖しく笑った。


「澪、顔真っ赤。俺以外の前でそんなにかわいー顔しちゃだめでしょ」


甘すぎるぅ………。

と、そんなとき予鈴がなった。


「遥人さん、もう行きます。流石にHRでないとなので」

「……分かった。じゃあまた」





“また”なんて、早くても明日だろうなんて考えてた私が悪かったのだと思う。

[会いたい。昼休み本棟屋上]

4時間目の前に遥人さんからそんなメッセージが来てるとも知らずに、昼休みを10分くらい教室で過ごしていたとき───

突然廊下が騒がしくなったと思えば、教室に遥人さんが現れた。


「ねえ、澪。なんで来ないの。もう、俺のこと裏切るの。嫌いになった?」

「はぇ? なんで中城先輩がここに………!」


クラスメイトの手前、“中城先輩”と呼んだのだが、遥人さんはどうやらお気に召さなかったようで私より一回りくらい大きい細くてでも角張った綺麗な手を私の首元に移動させた。


「行かなければ会わないとでも思った? 来なきゃ俺の方から行くに決まってんじゃん」


ちょうど喉のあたりに触れる親指に少し力が加わった。


「く、ぁ………」

「ねえ、答えて。何で来なかったの」


更に力が加わる。


「院瀬見さんっ」


数人のクラスメイトが心配したように私を見る。


「黙って。今は俺と澪が話してるんだけど」


遥人さんはそのクラスメイトを睨んだ。


「せん、ぱ………いっ」

「“遥人”だろ」
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