貴方の声が、心が聴きたい
「ごめ、なさ………っ。気づか、な、くて」

「へぇ……。本当に? 俺のこと無視したとかじゃなく?」

「ほんと、で、すっ。わたし、は、はるとさ、のものです、から……っ」


そこまで言うと、ようやく手が離れた。


「そうだよね。澪は俺の所有物(モノ)だもんね。よくわかってるじゃん」


クラスメイトはどういうことかと怯えたような目付きで遥人さんを見ている。


「澪。今後、一回でも約束破ったらお前のこと壊すから。わかったら、今後一切俺の連絡に気付かないとかやめてね」


ぎゅうと抱き締められて身動きが取れない。


「あの………お昼、食べましたか?」

「は? 食べてるわけないじゃん。誰のせいだよ」

「すみません………。じゃあ、一緒に食べましょ? その予定でしたし」

「ふぅん。そんなに俺と食べたいんだ。ならいいよ。でも、動くのめんどくさいからここね」


そう言って、遥人さんは私を膝にのせて近くにあった椅子に座った。


「遥人さん、ここじゃ迷惑なので私の席に行きません?」

「は? 俺がいるところは俺のものだけど」


ちょうどトイレに行っていたらしいこの席の主は廊下で立ち尽くしている。


「院瀬見、さん………」

「澪ちゃんどーしちゃったの」

「なんであの中城先輩が院瀬見さんと……」

「ほんと、顔と親の権力だけだよね」


何事かと廊下から顔を覗かせる生徒達は口々に言った。


「遥人さん、私の席に行きましょう? 私の席は窓際なので」


聞いていて気持ちがよいものではなく、改めてそう提案すると今度は素直に立ち上がった。

その時、ハッキリと見えた。
遥人さんの大きな感情が。

苦しい。悲しい。寂しい。
辛い。助けて。怖い。憎い。

だから、私は廊下の生徒達をキッと睨んで席を立った。
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