破局は極上の恋の始まり? 恋人に振られたら幼馴染にプロポーズされました【交際0日婚シリーズ】
「お待たせ~」

 そう言って、私はリビングの扉を開ける。すると、リビングにはさも当然のようにお母さんと仁くんがいた。

 幼稚園の頃とか、小学校低学年の頃とか。その頃は、よく仁くんはうちに遊びに来ていた。そのときを思い出して、懐かしい気持ちに浸る。

「葵、遅いわよ」

 お母さんがそう言って、立ち上がる。

「じゃあ、あとはゆっくりと二人でお話しなさい」
「……え」

 けど、それは聞いていない。そう思って私がお母さんに視線を向ければ、ウィンクを飛ばされた。

 ……一体、なんなんだ。

 そう思いつつ、私は先ほどまでお母さんがいたソファーに腰を掛ける。

「……えぇっと、仁くん、なんの用事……かな」

 きょとんとしつつ、私は仁くんに声をかけた。

 仁くんの姿は、昨日の記憶のままだ。……おぼろげだけど。でも、昨日仁くんと会ったのは真実だと理解できた。

「いや、葵のご両親に、正式に話を……と、思って」
「あ、そうなんだ……」

 ついつい納得の返事をしてしまう私。が、すぐに疑問符が頭の上に十個くらい浮かんだ。

 正式に話? なにを?

(え、もしかして私、昨日なんかやらかした……?)

 その所為で訴えられるとか、そういうこと!?

 あと、よく見れば仁くんしっかりとしたスーツ姿だし。……え、なんていうか本当に意味がわからない。

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