惑わし総長の甘美な香りに溺れて
「あいつら、江島をシメて用が済んだから解放したんだ。俺らに手は出すなって釘は刺しておいたみたいだけど、俺のこと恨んでるっぽい……モモにも手を出すかもしれない、絶対一人になるなよ?」

「う、うん」


 ヒソヒソと告げられて、もしかして陽がくっついていたのは彼らが登校してくるかもしれなかったからなのかな?って気づいた。

 私があいつらに危険な目に遭わせられるんじゃ無いかって。

 守ろうとしてくれたんだってわかって、嬉しくて背に手を回そうとした。

 でも。


「ねえ、あれ抱き合ってる?」

「まさかキスとかしてないよね!?」


 明らかに私たちに向けられた言葉にピタリと手を止める。

 そうだよ、ここ教室!

 守ってくれるのは嬉しいけど、ここまでくっつく必要は無いはず。


 やっぱり陽はくっつきすぎだよぉーーー!


 そんな私の悲鳴は声にならなかった。

***

 休憩時間のたびに陽は私の教室へとわざわざやってきた。

 周りの視線は『また来てる』って感じのものばかりで、どう考えても来すぎ。

 陽……過保護過ぎるよ。

 そんな陽が、昼休みに限ってなかなか来なかった。

 お昼は景子達と四人で食べようって言ってたはずなのに。


「景子、私ちょっと隣のクラス見てくるね」

「うん、わかったー」


 すでにお弁当を広げ始めた景子に断ってから、私は陽の様子を見に隣のクラスへ向かった。
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