惑わし総長の甘美な香りに溺れて
『そういえば少しだけピンク色の髪の娘と一緒にいなかったか?』


 俺を追いかけていた男の一人が、思い出したように口を開いた。


『っ!?』


 見られてたのか!?

 俺も思わず反応してしまったのが悪かった。

 甲野は『ふむ……』と軽く顎を撫でて、少しだけ肩頬を上げる。


『ではその娘が持っている可能性が高いな。あのパーティーの主催者に参加者リストを提示するよう伝えておけ』

『くっ!』

『ピンク色の髪というなら目立つだろう。すぐに見つかる』


 モモが見られていた可能性を考慮していなかった。

 本当に、二年前の俺は考えが甘い。

 モモを巻き込んだことを後悔し始めた俺に、甲野は笑って告げる。


『笙から聞いたぞ? お前は父親に南香薔薇の栽培場所の認証登録をしてもらっていたそうだな?……父親に何かあったとき、代わりにSを使えるようにと』

『……何が言いたい?』

『栽培場所に行くための認証登録をしていたのは、お前とお前の父親たち二人だけだったのだ。こちらの者も登録しようとしたのだが、中に入らないと登録は出来ないようでな……困っていたのだ』


 つまり、俺を使って認証するってことだろう。

 少なくとも利用価値があると見られてるなら殺されることはない。

 そう安堵していたのも束の間。
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