惑わし総長の甘美な香りに溺れて
エピローグ
 視線が、痛い!

 わかってはいたけれど、覚悟は決めていたつもりだけれど……やっぱりたくさんの注目を集めるのは居心地が悪かった。


「なぁモモ、やっぱり今からでもウィッグつければ?」


 一緒に登校中の陽が不機嫌そうに提案する。

 でも、それは無理な話だった。


「ううん、もう自分を偽らないって決めたから」


 元々、このままでいいのかな? って思いはあった。

 髪色のせいで攫われかけたり、周囲を巻き込んだりしないようにってずっと隠してた。

 でも、ずっと自分を偽って過ごしていくのも無理があるってこともわかってたから……。

 だから、SudRosaの人たちにも素の自分を晒したことだし、これをきっかけにウィッグをつけるのを止めようって決めたの。


「それに、後戻り出来ないようにウィッグ家に置いてきちゃったし」

「チッ、マジかよ」


 陽は私がウィッグしないで学校に行くことを反対しているせいか機嫌が悪い。

 私に男が群がるとか言ってたけど、そうなったとしても髪色が珍しいからってだけじゃないかな?

 そんなに心配する必要はないと思うんだけど……。

 とはいえ物珍しさから注目は集める。

 それは学校に近づくにつれて多くなった。


「え? あんな子同じ学校にいたっけ?」

「染めたとか? でもそれにしてはちょっと違う感じもするし……」


 不思議そうだった周囲の声は、教室に近づくと驚きの声になる。
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