惑わし総長の甘美な香りに溺れて
「俺も偽りたく無くなったの」


 って、そんな表情もどこかかわいくてキュンとしてしまった。

 しかも『偽りたく無い』って、それを言われたら私は何も言えないじゃない。

 私も偽りたくないって言ってこの格好で登校してきたんだから。



「すげぇな……蜘蛛の子散らす様ってこんな感じか?」


 そこに少し前に登校してきたのか加藤くんと景子が近づいてきた。


「おはよう、萌々香。ウィッグしないで登校するって聞いて予測はしていたけれど……案の定だったわね」

「おはよう景子、加藤くん。でも案の定って何!? 目立つのはわかってたけど、騒がれ方が想定外だったんだけど!?」


『…………』


 私の心からの叫びに同意してくれる人はいなかった。

 むしろ三人からは生ぬるい眼差しを向けられる。

 そして、加藤くんが苦笑いで呟いた。


「あー……陽、これから苦労しそうだな?」


 と。
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