惑わし総長の甘美な香りに溺れて
「おいおい、どこ行くんだよ」

「は、離して!」


 振りほどこうするけれど、男の力にはまったく敵わなくてびくともしない。


「まあ待てって。せっかくだから楽しもうぜ?」

「えー? 健太、お前こんな女好みだっけ?」


 ニヤニヤと笑う彼らは私のことをオモチャか何かくらいにしか思っていないみたい。

 私が逃げようと必死なのを面白そうに笑って見てる。


「好みじゃねぇけどさ、実験台にするには丁度いいんじゃねぇ?」

「実験台?」

「そ……こ・れ・の」


 私を掴んでいるのとは別の手で、ズボンのポケットから何かの小瓶を取り出し軽く振っている。

 何、それ?

 まさか、加藤くんにも使ったっていうN?

 でも、実験台って……。


「久斗使えねぇしさ、今から女調達すんのもメンドーだろ? どれくらい効くかこいつで実験してみようぜ」

「ああ、それもそうだな」

「ま、スタイルはそこそこ良さそうだしいいんじゃねぇ?」


 話しながら他の不良たちも私を囲むように近づいてくる。


「や、やだ。離して!」


 小瓶の中身がなんなのか分からないけれど、Nを使うような人たちが実験しようなんていうシロモノだ。

 ろくなものじゃないに決まってる。
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