惑わし総長の甘美な香りに溺れて
「Nの媚薬香は強力だからな、こうするのが一番手っ取り早いんだ。でも最後までする必要はねぇから」


 声と同じく優しく私のシャツのボタンを外した陽は、露わになった鎖骨部分を指でなぞりながら「それに」と不敵な笑みを浮かべる。


媚薬香(こんなもの)使わずに、俺の手だけでモモをメチャクチャに可愛くしたいからな」

「え? あっ!」


 鎖骨を撫でていた指が、今度は手のひら全体を使って首筋を撫で上げる。

 ゾクゾクと何かが駆け上がっていく感覚に震えているうちに、陽の顔が耳元に寄せられた。


「ホントかわいい……それに、モモからは甘い匂いがするんだ……ほら、こうするともっと甘くなる」


 耳に直接、陽の柔らかくも低い声が届く。

 同時に男らしい硬い手が私の脇腹から下へと流れていく。


「やっ、だめ……」


 私の中にある熱が更に暴れ回るような感覚になって、思わず拒否の声を上げてしまった。

 でも、そんな私の言葉になんか惑わされずに陽はもっと手を動かしていく。
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