惑わし総長の甘美な香りに溺れて
「萌々香……」


 私を求めるように名前を呼ぶ陽は、やっぱりかわいい陽でもあって……。


「は、るぅ……」


 かわいさと危険さ、両方を内包する陽という沼に、どんどん沈められていきそうになる。

 ううん、もしかしたら……もうとっくにハマッていたのかもしれない。

 陽の薔薇の香りをはじめて感じた時から。

 陽の香りに包まれて、深くなるキスに翻弄されて……私はもう陽からは逃げられないんだと思った。


***


「で? そういえばどうしてウィッグつけてるんだ?」


 ついさっきまで濃厚なキスをしていたとは思えないほどいつも通りの陽は、帰り支度をしながら普通に聞いてきた。

 家には友達と遊びに行って、二人とも遅くなると連絡しておいてくれたらしい。

 でも流石に遅くなりすぎるとマズいからってキスより先には行かなかった。

 いや、その前にはそれ以上のことされてたんだけどね。

 思い出して急激に体温が上がりそうになった私は、軽く頭を振って記憶を振り払った。


「モモ?」

「あ、えっと、ウィッグつけている理由ね」


 慌てて質問されたことに意識を戻す。
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