惑わし総長の甘美な香りに溺れて
黒髪の男の子
 家に帰る頃には夜も九時を過ぎていて、お義母さんから少しお小言を貰ってしまった。


「もう高校生だし、明日は休みだからあまりうるさく言いたくはないけれど……だからって遅くなり過ぎるるのは良くないと思うわよ?」


 部活で遅くなったわけでもなく、心配をかけないために『遊んで来た』と伝えていたらしいのからそのお小言が出てくるのは当然なんだろうな。

 そう思って私は素直に「ごめんなさい」とあやまった。

 陽は「ごめんごめん」って軽い謝罪の言葉だったけれど。

 でもまだ帰ってきてないお父さんも会社の接待だとかで飲みに行ってるらしいから、私たちばかりに言うのもどうなの? とは思ってしまう。

 接待と学生の遊びは違うってわかってるけどさ。


 なにはともあれ、それ以上はうるさく言われなかったからまあいいか。

 今日は色々ありすぎて疲れちゃったから、お風呂に入ったらすぐに寝てしまおう。

 お腹も空いているけれど、時間が時間だから何か軽いものを食べられれば十分かな。


「とりあえず、リラックスして眠れるようにラベンダーのアロマ準備しておこうかな?」


 呟きながらアロマがある鏡台へと向かった。

 そこで前に調香しておいたラベンダーとイランイランのアロマオイルを探していると、ふと鏡台の横にあるチェストに目がいく。

 その中に入っているものを思い出して、私は「あっ!」と思わず声を上げた。
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