惑わし総長の甘美な香りに溺れて
「俺は(しょう)、SudRosaの副総長をしている」

「あ、藤沼萌々香です」


 笙さんがちゃんと自己紹介してくれたから、私も改めて名乗る。

 見た目は怖そうだけれど、紅茶を丁寧に淹れたりとか意外と真面目そう。

 話し方も結構しっかりしているし、大人の男の人って印象だった。


「災難だったな、陽もわざわざ下っ端シメる日に彼女のお披露目しなくても……まあ、あいつのことだから早く自慢したかったんだろうけど」

「じ、自慢!?」


 この間のように私が危険な目に遭わないようにだって説明はされたけれど、自慢したかったなんて聞いてない。

 それは笙さんの勘違いなんじゃないかな? と思っていたんだけど。


「自慢だろ? あんなに浮かれてる陽初めて見たぞ?」

「そう、なんですか……」


 笙さんと陽がいつからの知り合いなのかは分からないけれど、少なくとも私よりは長いと思う。

 勿論SudRosaの総長としての顔もずっと前から知っているはずだから、笙さんの言葉が全くの間違いってこともないかもしれない。

 ……陽、浮かれてたんだ?
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