惑わし総長の甘美な香りに溺れて
溺愛と守り
 視線が、痛い。

 温かな日差しを背後に、私は陽と二人並んで教室内が見える形で立っていた。

 向かい合うように立っているのは景子と加藤くんといういつもの光景。

 でも、今日はいつも以上に周囲の視線が痛い。

 なぜなら。


「陽? そろそろ教室戻った方が良いんじゃない?」

「えー? もうちょっとくらい良いじゃん」


 私の肩を抱いている陽は、私のおでこに頬をすり寄せて我が儘を言う。

 一緒に登校して、鞄を教室に置いた途端私の教室に来ている陽はずっとこの調子だ。

 つき合っているのは秘密のはずだよね?


「いや、でもさ。朝の準備とかもあるでしょ?」

「そんなんギリギリでも何とかなるって」


 すり寄せていたおでこにチュッとキスをされて、私の顔は一気に赤くなる。

 耐えきれなくて下を向くと、周囲のヒソヒソ声が聞こえてきた。


「あの二人、いつも以上にくっつきすぎじゃない?」

「だよね? いくら義理の姉でもさ、陽くん独り占めしすぎ」


 陽は人気者だから、主に女子からやっかみじみた文句が出てる。

 逆に声はなくても、いつも以上にひっついてる私と陽を不思議がってる視線もたくさんあった。

 前からくっついてくることはあったけど……付き合い始めてからもくっつかれることは多くなったけれど……。

 でもこんなあからさまじゃなかったよね!?
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