三途の駅のおくりもの
おくりもの
ーーあの電車は魂を運んでいる。それは舞依から聞いたことだった。
今にも雪崩れそうな雪山のそばを、フェンスもなしに線路が通っている。ひどく錆びたその上を、ボロボロの電車が走り抜けた。それを眺めていたときに話しかけられたのが、俺と舞依の出会いだった。
舞依はいつの間にか隣にいて、俺が通う予定の高校の制服を身にまとっていた。短いスカートから伸びる脚は、見ているだけで寒い。ツヤのある黒髪が印象的だ。
「魂を運ぶって、どこに?」
「あの世」
へえ、と適当に相槌を打つと、舞依は驚いたように俺を見る。
「信じるの?」
「うん」
「なんで?」
「……この村の電車は、昔に廃線になってる。さっきの車両、運転士がいなかった。あんなに錆びたレール、電車が走れるはずがない。つまり、あの電車は普通じゃない」
「……でもさ、魂とかあの世とか、そんなの非現実的じゃない?」
「あんたが言ったんだろ」
「へへ……私の話、信じてもらったの初めてだからびっくりしちゃって」
いちいち疑って反論するのはバカバカしい。父親の仕事の都合で都会からこのド田舎に引っ越すことになったときも、なにも言わなかった。仕事なんだから仕方ない。何事もそうやって受け入れてしまった方が楽なんだ。
「あの電車ね、見えないんだよ、みんなには」
「幽霊みたいなもんか」
「そーゆうの、信じるんだ。意外だなぁ」
「意外も何も、いま会ったばかりだろ」
「確かに。ね、また会える?」
「なんで」
「会いたいから!」
――変な奴。それが舞依に対する第一印象。
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