三途の駅のおくりもの
会えるかもしれないし会えないかもしれない。そう伝えると舞依は、ここにまた来てほしいと提案してきた。ここは人気のない山の近く。俺は新天地の散策で通りかかっただけで、もうこんなところに用はない。そもそも舞依だってここで何をしていたのだろう。ただ、そこまで言うのなら。
「気が向いたら、また来る」
暇潰しになら来てもいい。そう言うと舞依はうれしそうに笑うから、本当に変な奴だと思った。
◆
それから、俺が気まぐれにあの場所へ向かうと、舞依とは会えたり会えなかったりした。電車も同じく、来たり来なかったり。そして来るときは必ず、誰かが乗っている。魂というのは、その人と同じ姿をしているらしい。
舞依はそれを見るたびに、瞼のふちをきらめかせて、切ない表情を浮かべる。死ぬ人を見るのがつらいなら、こんなところに来なければいいと言ったことがある。
「昔、私のおばあちゃん、一人で住んでてね。ずっと誰にも会えずに、ひとりぼっちで死んじゃったの。おばあちゃん、さびしかったと思う。……だから、そうやって見送られない人が少しでも減るように。私は、あの電車をなるべく見ていてあげたいんだ」
それでも、つらいならやめればいい、そう思う俺は冷酷なのかもしれない。人が死ぬのは当然のことだ。でも、舞依が優しいということはわかる。舞依が誰かにそうしてあげたいと願うのを、俺は止めない。
「……お人好し」
ただせめて、舞依が背負っているものが少しでも軽くなればいい。そんなおせっかいの焼き方すらわからなくて、口から出たのはつまらない言葉だった。舞依は、困ったように小さく笑うだけだった。