三途の駅のおくりもの
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俺たちが互いの名前を教えたのは、会って五度目のときだった。
「明智の智に、紀元前の紀で、智紀」
「難しっ!」
「……知るの下に日で智、いとへんに己で紀」
「わかりやすい! 私はねー、てんてこ舞いの舞に、依存の依で、舞依」
「微妙な例えだな……」
他愛のない会話。でも舞依はよく笑う。俺がいることで少しでも笑顔が増えるなら、俺たちが会う意味はきっとある。
しばらくして、暗黙のルールができた。ここに来るのは、放課後の夕方4時、決まった時間。曖昧な待ち合わせは、約束へと変わっていった。
ある日は、一緒に散歩した。線路の近くには古びた倉庫があって、そこに住み着いている猫を見せられた。ミケちゃんと呼んでかわいがっているらしい。どう見てもトラ猫なのに、と言うと、ミケって感じの顔だからいいの、とよくわからない理論で叱られた。
鍵もかかっていないその倉庫は公共のもので、中を覗くと掃除道具やイベント用の備品が収納されている。その中に、花火用の打上筒があるのが見えた。
「花火大会でもあるの?」
「うん、今年は何日だったっけ……とにかく、冬の間にやるの。すっごく綺麗だよ!」
「へえ、俺、花火見たことない」
「ほんと!? 人生で一度も!?」
「え、うん。俺んち、忙しかったし……」
一緒に見る人がいなかった。親は仕事で忙しく、引っ越しと転校を重ねた人生に友達なんてほとんどいない。昔は花火に憧れて、仕組みを動画で学んだりもした。
「……じゃ、一緒に行く?」