雪の匂いにキミとの恋を
五年前の冬。

その日は普段雪の降らない私の街に珍しく雪が降った。

滅多に降らない雪にはしゃぐ私を横目に琢磨は煙草をふかしながら浮かない顔をしていた。二つ年上の琢磨は自分よりやけに大人に見えて、まだ高校三年生だった私は彼の抱えていた本当の想いに気づかなった。


──『東京にいく。栞菜(かんな)、別れて欲しい』

目の前の綺麗な真っ白な雪景色があっという間に黒く染まったことをよく覚えてくる。

『どうして?』

だって喧嘩もしていなければ、昨日だって抱き合ってキスをしたばかりだったから。私は琢磨が就職先を東京にしようか迷っていたこと知っていた。けれど琢磨が東京に行くのと、私達が別れなければならない理由が到底結びつかなくて、琢磨が困るのをわかっていながら私は泣きじゃくった。

──『ごめん』

私が理由を聞いても琢磨はハッキリと理由は言わなかった。専門学校を卒業したら東京に行って仕事を探すこと、もともと卒業したら私と交際を続けるつもりはなかったことを繰り返し口にした。

そして、雪の降る湖のほとりで私と琢磨は二年の交際に幕を降ろした。
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