壁尻マッチング☆~アンニュイな王太子さまをその気にさせる古の秘策!~
幕間 残された壁尻たち
コンラートが妃へ会いに全力疾走していったあと、儀式の部屋を訪れた者たちがいた。
コンラートの弟のハイノと、コンラートの叔父のディーターだ。
ハイノはコンラートと同じ銀髪青瞳の色彩を持つ。
髪はコンラートよりも長く、体躯はコンラートより細めだ。
21歳になるものの、兄が結婚するまでは自分も結婚はしないと決めていて、まだ婚約者もいない。
兄が国王になった暁にはぜひ片腕として支えたいと、今は宰相に師事している。
ディーターは王弟だが国王とは母が異なり、先代の国王がクマリクク王国出身の踊り子に手をつけて生まれた庶子だった。
そのため王族に多い銀髪青瞳を持たず、短く刈られた黒髪に紅瞳、褐色に近い肌、騎士団長を拝命しているだけあって熊のようないかつさが特徴だ。
年は34歳、いまだ未婚で、もっぱら部下の若い騎士たちと娼館通いを楽しんでいる。
抜かずの五発というのが娼婦たちに付けられたあだ名だ。
そんな王族二人は、国王からの指示でここに足を運んだ。
「『壁尻の儀』を経て、コンラートは必ず三人の中から未来の王太子妃を選ぶだろう。しかし、一人が選ばれると言うことは、二人が選ばれないと言うことだ。そこで、そなたたち独身王族の出番だ。二人にも、コンラートの後に『壁尻の儀』を経験してもらいたい。そうだな、そろそろ終わるだろうから、儀式の部屋へ行ってみるとよい」
『壁尻の儀』が何かも知らず、取りあえず連れ立って部屋の前までやってきたものの、そこからどうしたらいいのか分からない。
「やけに静かだな。終わったのか終わってないのか、判断がつかねえ」
「そうですね、儀式のお邪魔になってはいけませんし、そっと中を覗いてみましょうか」
ハイノの提案で、音がしないように扉を薄く開けると、二人は雁首をそろえて部屋の中を伺った。
そしてそこで見たものは――二体の壁尻だった。
◇◆◇
「なんということでしょう!」
ハイノは右側の壁尻に駆け寄る。
垂れた両足の下の絨毯が色濃くなっているのを見て、すぐに粗相をしたのだと察する。
「女性は下半身を冷やすとよくないと聞きました。きっとこのように寒い恰好で放っておかれたせいで、耐えられなかったのですね」
ハイノはすぐさま着ていた上着を脱ぐと、壁尻にそっとかけてやる。
「すぐにここから出してもらいましょうね。それまでは貴女の下半身は私が護ります」
このとき、エルダは失神から目覚めていたものの、儀式の終了のお知らせがないため、またコンラート殿下がくるかもしれないと待っていた。
お漏らしをしてしまったことは恥ずかしかったが、この格好のままで居るしかない。
だが、小水で濡れた両足が乾くにつれ、体温が奪われていくのを感じる。
どうしよう、またしたくなっちゃった……。
そんなときに声が聞こえたのだ。
エルダを労わる優しい声が。
しかも寒かった両足に何かをかけてくれた。
その声がコンラート殿下ではないと分かっていたが、心細かったエルダはホッとして――そのまま嬉ションをしてしまうのだった。
後日、あのときの声がハイノ殿下だったと知ったエルダはすっかりハイノ推しになってしまい、今度はハイノ殿下の婚約者候補に自分をねじ込んでくれと父親に頼んでいるのだとか。
◇◆◇
「なんて美しい筋肉だ!」
ディーターは真ん中の壁尻に駆け寄る。
「下腿三頭筋の描くなまめかしい曲線、続く大腿二頭筋には艶と張りがあり、引き締まった大殿筋にいたってはもう芸術の域だ!」
己もガチムチの筋肉鎧をまとうディーターは、マッスル愛好家だった。
女神にかしずくように両足の間に跪き、しげしげと角度を変えて眺めていると――ディーターの頭の上で何かがパカパカし始めた。
サザリーはせっかく披露した訓練の成果が、コンラート殿下に受けなかったことに首をかしげていた。
大使館の職員たちも、呼び寄せた高級男娼たちも、大絶賛してくれたテクニックだったのに。
いつもは勝気で強気なサザリーだが、ちょっとだけ泣きそうになっていた。
そんなときに声が聞こえたのだ。
サザリーを褒め称える渋い声が。
サザリーが猛特訓の末に手に入れた筋肉を、この人なら分かってくれるかもしれない。
しょげていたサザリーは俄然やる気を出した。
そしてコンラート殿下にして見せたように、もう一度アレを始めたのだ。
「8の字筋をここまで自在に操れる女は娼館にもいない!」
感涙するディーターの雄たけびが部屋を響かせたのはすぐだった。
コンラートの弟のハイノと、コンラートの叔父のディーターだ。
ハイノはコンラートと同じ銀髪青瞳の色彩を持つ。
髪はコンラートよりも長く、体躯はコンラートより細めだ。
21歳になるものの、兄が結婚するまでは自分も結婚はしないと決めていて、まだ婚約者もいない。
兄が国王になった暁にはぜひ片腕として支えたいと、今は宰相に師事している。
ディーターは王弟だが国王とは母が異なり、先代の国王がクマリクク王国出身の踊り子に手をつけて生まれた庶子だった。
そのため王族に多い銀髪青瞳を持たず、短く刈られた黒髪に紅瞳、褐色に近い肌、騎士団長を拝命しているだけあって熊のようないかつさが特徴だ。
年は34歳、いまだ未婚で、もっぱら部下の若い騎士たちと娼館通いを楽しんでいる。
抜かずの五発というのが娼婦たちに付けられたあだ名だ。
そんな王族二人は、国王からの指示でここに足を運んだ。
「『壁尻の儀』を経て、コンラートは必ず三人の中から未来の王太子妃を選ぶだろう。しかし、一人が選ばれると言うことは、二人が選ばれないと言うことだ。そこで、そなたたち独身王族の出番だ。二人にも、コンラートの後に『壁尻の儀』を経験してもらいたい。そうだな、そろそろ終わるだろうから、儀式の部屋へ行ってみるとよい」
『壁尻の儀』が何かも知らず、取りあえず連れ立って部屋の前までやってきたものの、そこからどうしたらいいのか分からない。
「やけに静かだな。終わったのか終わってないのか、判断がつかねえ」
「そうですね、儀式のお邪魔になってはいけませんし、そっと中を覗いてみましょうか」
ハイノの提案で、音がしないように扉を薄く開けると、二人は雁首をそろえて部屋の中を伺った。
そしてそこで見たものは――二体の壁尻だった。
◇◆◇
「なんということでしょう!」
ハイノは右側の壁尻に駆け寄る。
垂れた両足の下の絨毯が色濃くなっているのを見て、すぐに粗相をしたのだと察する。
「女性は下半身を冷やすとよくないと聞きました。きっとこのように寒い恰好で放っておかれたせいで、耐えられなかったのですね」
ハイノはすぐさま着ていた上着を脱ぐと、壁尻にそっとかけてやる。
「すぐにここから出してもらいましょうね。それまでは貴女の下半身は私が護ります」
このとき、エルダは失神から目覚めていたものの、儀式の終了のお知らせがないため、またコンラート殿下がくるかもしれないと待っていた。
お漏らしをしてしまったことは恥ずかしかったが、この格好のままで居るしかない。
だが、小水で濡れた両足が乾くにつれ、体温が奪われていくのを感じる。
どうしよう、またしたくなっちゃった……。
そんなときに声が聞こえたのだ。
エルダを労わる優しい声が。
しかも寒かった両足に何かをかけてくれた。
その声がコンラート殿下ではないと分かっていたが、心細かったエルダはホッとして――そのまま嬉ションをしてしまうのだった。
後日、あのときの声がハイノ殿下だったと知ったエルダはすっかりハイノ推しになってしまい、今度はハイノ殿下の婚約者候補に自分をねじ込んでくれと父親に頼んでいるのだとか。
◇◆◇
「なんて美しい筋肉だ!」
ディーターは真ん中の壁尻に駆け寄る。
「下腿三頭筋の描くなまめかしい曲線、続く大腿二頭筋には艶と張りがあり、引き締まった大殿筋にいたってはもう芸術の域だ!」
己もガチムチの筋肉鎧をまとうディーターは、マッスル愛好家だった。
女神にかしずくように両足の間に跪き、しげしげと角度を変えて眺めていると――ディーターの頭の上で何かがパカパカし始めた。
サザリーはせっかく披露した訓練の成果が、コンラート殿下に受けなかったことに首をかしげていた。
大使館の職員たちも、呼び寄せた高級男娼たちも、大絶賛してくれたテクニックだったのに。
いつもは勝気で強気なサザリーだが、ちょっとだけ泣きそうになっていた。
そんなときに声が聞こえたのだ。
サザリーを褒め称える渋い声が。
サザリーが猛特訓の末に手に入れた筋肉を、この人なら分かってくれるかもしれない。
しょげていたサザリーは俄然やる気を出した。
そしてコンラート殿下にして見せたように、もう一度アレを始めたのだ。
「8の字筋をここまで自在に操れる女は娼館にもいない!」
感涙するディーターの雄たけびが部屋を響かせたのはすぐだった。