不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。

 この腕の中にずっと包まれていたい。

 そう思ってしまう……そんな事は叶わないのに……。

 紫門さんには奥さんがいる。

 間違ってはいけない。

 そう思っていても、この優しい手に縋ってしまう。

 報われない思いと分かっているのに、こちらを見て欲しい、誰よりも優しくして欲しい、誰よりも愛して欲しいと、ワガママな思いが溢れ出しそうになる。

 そっと瞳を閉じながらその思いを必死に抑えていると「菫花さん」と、寂しそうな声が聞こえてきた。私がそっと顔を上げると、そこには声と同様に寂しそうな顔をした紫門さんの顔があった。

「菫花さん、ここへはもう来られないんだ……。ここでもう君に会うことが出来ない」

「えっ……」

 どういうこと……?

 紫門さんが言っている意味が分からない。

 紫門さんは子供をなだめるように、私の頭を撫でながらゆっくりと話し始めた。

「私は病気でね。もう長くは無いんだよ」
 
 ドクンッと嫌な音を立てて心臓が動き出す。

 紫門さんが病気?

 長くない……?

 長くないって何?

 ウソだ……信じられない……信じたくない。




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