不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。
紫門さんが窓から手を振る姿を見なくなって二週間が過ぎていた。
今日も紫門さんはいない。
菫花は病院に向かって一礼しようとしたとき、看護師の白衣を着た女性に声を掛けられた。
「あなた……菫花さん?」
「はい……」
看護師だと思われる女性に声を掛けられ、菫花は頷いた。
「良かった。これを預かっていたの」
女性から手渡せれたのは一通の手紙だった。『菫花さんへ』と書かれた手紙の裏には京極紫門と書かれていた。
紫門さんからの手紙……。
菫花は看護師さんにお礼を言うと手紙を持ち帰った。そして手紙をテーブルの上に置くと、それをジッと見つめた。
手紙を開けるのが怖い。
右手を何度も手紙の近くまで持っていくが、それを手に取ることが出来ない。
菫花は小さく息を吐くと、手紙をそのままにして夕食を摂り、お風呂に入った。温かな風呂にゆっくりと浸かり、身支度を整えると、リビングの椅子へと座った。無音の部屋は落ち着かず、テレビを付けると毎週やっているバラエティーが放送されていた。芸能人が楽しそうに声を上げて笑っている。テレビの中の人々が楽しうそうに笑っていて、羨ましくなった。
私は今だに笑えていない。紫門さんと会えなくなってから泣くことも出来ていなかった。
スッと息を吸い込みゆっくりと吐き出すと、菫花は手紙と向き合った。