不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。

 手紙を開けたいのに開けたくない。

 矛盾した考えが頭を行き来する。

 しかしずっとこのままと言うわけにはいかず、手紙に手を伸ばし封を開けた。するとそこには弱々しい筆圧で書かれた文字が並んでいた。


『菫花さん元気にしていたかい?

 少しは笑えるようになったかい?

 泣けるようになったかい?

 感情を押し殺してはいけないよ。

 君の気持ちに寄り添い、受け止めてくれる人と出会えると良いのだが……。

 もし、そんな人と出会うことが出来たら素直になりなさい。

 自分の気持ちを少しずつで良いから話すんだ。きっと君の思いを受けてもてくれるはずだから。

 頼っても良いんだよ。

 弱さをさらけ出しても良いんだよ。

 君は人間なんだ。

 私が君の側にもう少しだけいれたら良かったのだけど……もう時間が無いようだ。

 君がこの手紙を受け取った時には私はもう、この世にはいない。

 最後まで君の面倒を見て上げられなかったことだけが心残りだよ。

 私は君に出会うことが出来て良かった。

 こんなおじさんのワガママに付き合って、優しい不倫をしてくれた菫花さん、ありがとう。 

 一緒にお茶に付き合ってくれてありがとう。

 散歩に付き合ってくれてありがとう。

 話し相手になってくれてありがとう。

 優しい不倫に付き合ってくれてありがとう。

 幸せになるんだよ。

 君の幸せを願っている。

 京極紫門 』




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