不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。
*
それから副社長がロビーに現れるたびに、私は副社長を盗み見た。
私以外に向けられる笑顔に胸がズキリと痛む。
フーッと溜め息を付いていると、肩をポンッと叩かれた。
「菫花さんおはよう」
「あっ……」
私は、社長に頭を下げると後ずさりながら壁に寄った。そっと顔を上げると社長はもう、そこにはいなかった。しかし冷たい視線を感じ瞳を彷徨わせると、鋭い視線が……。
苛立った様子で、副社長がこちらを睨みつけていた。
またか……いつもの事だが、胸がズキリと痛んだ。そんな菫花の様子には気づくこと無く、副社長はグッと唇を引き結ぶと、踵を返して行ってしまった。