不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。

 *

 一年前――。

 俺が海外支社で働いていると、珍しく母から連絡がきた。海外で仕事をするようになってから、時差もあり家族とはあまり連絡を取っていなかった。兄とは仕事の件でそれなりに連絡を取っていたのでまあ良いか。などと考えていた。しかし、母からの連絡で俺の日常は一変する。

 父さんが病気……もう長くない?

 頭が真っ白になった。

 ウソだろ……父さんは俺の憧れだ。

 小さな子会社だったこの会社を、誰でも一度は聞いたことのある会社へと大きくし、会社の利益、収益を躍進させたのは父だ。それを兄が継いで、俺はその補佐がしたくて海外支社で業績を積み、これから親孝行をと考えていたのに……。

 俺は急いで日本に帰国した。

 しかし父は以外にも元気だった。

 父は「そんなにすぐに逝ったりしない」と笑いながら言っていた。

 俺は海外と日本を往復しながら仕事を続けていたある日、あることに気づいてしまった。

 父は何故か夕方になると病院の窓辺に立っていた。

 一体ここから何を見ているのだろうか?

 父の視線の先が気になり、外に視線を移すとそこには一人の女性が立っていた。

 あれは?




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