不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。
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父が他界して俺は、海外支社から日本の本社に栄転となった。海外と日本を行ったり来たりする生活は大変だったため、やっと落ち着けると思っていた時だった。本社の階段であの女と遭遇した。
そうだ、ここにはこの女がいたんだ。
何食わぬ顔をして清掃をするこの女に無性に腹が立った。
無視をしてその場を立ち去れば良いのに、怒りにまかせて女に話しかけた。
「お前はここで働いているのか」
「…………」
女は何も答えず、イライラした。
「何故何も言わない?」
「…………」
問い詰めても何も言わない女。
父はこんな女の何処が良かったのだろう。地味で根暗げなこの女の何処に魅力を感じたのだろうか?父の趣味も悪くなったものだ。
「ふん……調べれば分かることだ」
俺はその場を後にした。