不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。

 *

 父が他界して俺は、海外支社から日本の本社に栄転となった。海外と日本を行ったり来たりする生活は大変だったため、やっと落ち着けると思っていた時だった。本社の階段であの女と遭遇した。

 そうだ、ここにはこの女がいたんだ。

 何食わぬ顔をして清掃をするこの女に無性に腹が立った。

 無視をしてその場を立ち去れば良いのに、怒りにまかせて女に話しかけた。

「お前はここで働いているのか」

「…………」

 女は何も答えず、イライラした。 

「何故何も言わない?」

「…………」

 問い詰めても何も言わない女。

 父はこんな女の何処が良かったのだろう。地味で根暗げなこの女の何処に魅力を感じたのだろうか?父の趣味も悪くなったものだ。

「ふん……調べれば分かることだ」

 俺はその場を後にした。



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