不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。
不機嫌なキスと相手の名と……
*
菫花はアパートのベッドの布団に潜り、眠りにつこうとしていた。いつもなら眠る前に紫門さんを思い浮かべるのだが、今日は違った。
副社長にぶつかってしまった際に向けられた笑顔……。
みんなに向けられる優しい笑顔だった。
いつか私にも微笑んでほしいと思っていた。
その笑顔を思い出すと、トクンッと胸が高まり忙しなく心臓が動き出す。
紫門さんの時のような穏やかな胸の高まりではなく、甘く痺れるような時めきにソワソワする。
副社長の名前は京極蒼紫さん……。
社長と話している時に、副社長の名前を知った。そして、紫門さんの息子さんなんだと言うことも教えてもらった。二人の面影がこんなにもダブルのも、既視感を覚えるのも、全ては二人が血の繋がった親子だからだったんだ。全てのパズルのピースがハマったかのように、カチリと私の頭の中で何かが鳴った。
だから副社長はこんなにも私に対して嫌悪感を露わにするのだ。
彼は私と紫門さんの事を、何処まで知っているのだろう……。