不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。
*
副社長……蒼紫さんはあの日からやたらと私に触れたがった。それがただの気まぐれだと分かっているのに、私の心をザワつかせた。
何度乱暴に唇を奪われても、紫門さんの面影が重なるこの人を、私は拒むことが出来ない。
あの人がしたいようにさせてあげたい。
キスをされながら、私は思わず蒼紫さんの背中に手を回した。すると蒼紫さんの体がピクリと震えた。
「お前、父さんともこういうことをしてきたのか?」
その言葉を聞き、体から血の気が引いていく。
この人は知っている……私と紫門さんの関係を……。
私は首を左右に振って否定するが、蒼紫さんは「ふんっ」と鼻で笑った。
「別にかまわないさ」
その言葉にズキズキと胸が痛んだ。
別にかまわないとは、関係ないと言うことなのだろう。壁を作られたように感じた。
少しずつ歩み寄れているような気がしていたから……辛いな。
もうそろそろ離れないと。
「あの……副社長……」
「蒼紫だと言っただろう」
蒼紫さんは私の顎を軽くつまむと、自分の顔の前にもっていく。紫門さんを思わせる瞳が私の瞳を捕らえる。
そして重なる唇。
蒼紫さんは言葉では冷たく突き放すのに、キスをする時はとても優しい。乱暴に唇を重ねながらも頭を優しく撫でてくれる。その優しさに心が震えた。
蒼紫さん……。