不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。
ドクンッと菫花の心臓が大きな音を立てる。痛いほどに心臓が大きく動き出し、私は服を鷲づかみにした。
立ち聞きはいけないことだと分かっているのに、足が床と張り付いてしまったかの様に動かない。
蒼紫さんは何て答えるつもりなの?
不安な気持ちを抑えながら、蒼紫さんの言葉を待った。それから少し間が空いて蒼紫さんの声が聞こえてきた。
「好きだよ。凛」
う……そ……。
体がワナワナと震え出し、呼吸が浅くなる。
信じていたのに……。
私は少しでも自分を落ち着かせようと、口元を両手で押さえながら呼吸を促した。それでも震える体を止めることが出来ず、混乱が続く。とにかくここから離れなければいけない。ここにいてはいけないと、必死に重くなってしまった足を一歩動かした。すると足が一歩、また一歩となんとか動き出す。自分の足が動き出したことに安堵し、菫花は回りを見ずに歩き出した。そして一人の男性とぶつかってしまう。
「おっと、失礼」
男性がそう言って謝ってくれたが、菫花は余裕無く会釈をしてその場から立ち去った。ぶつかった男性は、驚いた顔をしながら菫花後ろ姿を凝視した。
「白川菫花……?」
男性がそう呟いた声は菫花には届かなかった。