不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。

「蒼紫、どうしたんだ。何かあったのか?」

 仕事で呼び出せれたと思っていたが、どうやら兄として心配で呼んでくれたらしい。この人は昔から優しい人だった。面倒見が良くて、こんな俺にも「手の掛かる弟こそ可愛いもんだ」と世話を焼き可愛がってくれた。大人になった今でさえ、こうやって心配してくれる。

「菫花さんのことか?」

「…………」

 何も言わない俺の肩を、兄さんはポンポンと叩いた。 

「何があったか知らないが、とにかく菫花さんと仲直りしろよ。どうせお前が悪いんだろう?」

「分かっている」

 ふーっと兄さんが溜めていた息を吐き出した。やれやれと言った様子で、あるパーティーに誘ってくれた。それは関谷総合商社のパーティーだった。

「そこに菫花さんと行ってこい。言っておとくけど、これは仕事だぞ」

 そう言って兄さんが笑った。俺が菫花を誘いやすいよう、仕事と言うことにしてくれたのだろう。

「兄さん……ありがとう」

「ふっ……そんな顔をするな。頑張れよ」

 兄さんがそう言って、もう一度肩を叩いた。




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