【受賞作】命がけの身代わり婚~決死の覚悟で嫁ぎます~
「先ほど玄関を確認したら、お嬢様のお気に入りの靴が一足無くなっています」
「じゃあ、ここにはいないってこと?!」
「ほかに手がかりがないか、もう一度部屋の中を見て参ります」
フィオラは嫌な予感がしてならなかった。自然と悪いほうへ思考が働く。
(誰にも告げずに朝早くから出かけるなんて……。いったいどこへ?)
あわてて階段を駆け上がると、そのあとをサマンサも追ってきた。
サマンサが大きな音を立てながらクローゼットの扉を開ける中、フィオラは机のそばにあるゴミ箱に目を向け、残っていた紙くずを取り出す。
「奥様、こんなものが……」
くしゃくしゃに丸めて捨てられていた紙を広げたフィオラは、そこに書かれていた文字を見て近くにいた彼女を呼んだ。
『お父様、お母様へ。カリナは遠くへ行きます。捜さないでください。本当にごめんなさい。こうするしか方法が思い浮かば』
おそらく両親に手紙を残そうとしたのだろう。
けれど気が変わったのか、文章は短い上に途切れていて最後まで書かれていなかった。
「な、なによ、これ!」
それを見たサマンサは顔を真っ青にしながら激しく動揺し、今にも卒倒しそうになっている。
「奥様、大丈夫ですか?!」
「と、とにかく旦那様に報告を」
フィオラは彼女の腕を支えてゆっくりと階段を下り、マルセルの部屋の扉をノックして中へと入った。
カリナはこっそりと朝早くにひとりで屋敷を出て行ったのだ。それで間違いないだろう。
書きかけの手紙を目にしたマルセルは、口をへの字に曲げて眉根を寄せた。
「あの子、行くあてなんかないはずよ。屋敷を出ていったいどこに……?」
「サマンサ、落ち着きなさい」
「落ち着いていられるわけないでしょう? もしかして死ぬつもりなんじゃ……。遠くへ行くって、そういうことじゃないかしら?」
最悪の結末を想像して恐怖が押し寄せたのか、サマンサは両手で顔を覆った。
元々カリナは天真爛漫な性格だ。フィオラの見立てだと、手紙を残そうとしたものの気持ちを上手に書けずにあきらめただけのように感じたけれど。
思いつめたカリナが自死を考える可能性はゼロではない。
「じゃあ、ここにはいないってこと?!」
「ほかに手がかりがないか、もう一度部屋の中を見て参ります」
フィオラは嫌な予感がしてならなかった。自然と悪いほうへ思考が働く。
(誰にも告げずに朝早くから出かけるなんて……。いったいどこへ?)
あわてて階段を駆け上がると、そのあとをサマンサも追ってきた。
サマンサが大きな音を立てながらクローゼットの扉を開ける中、フィオラは机のそばにあるゴミ箱に目を向け、残っていた紙くずを取り出す。
「奥様、こんなものが……」
くしゃくしゃに丸めて捨てられていた紙を広げたフィオラは、そこに書かれていた文字を見て近くにいた彼女を呼んだ。
『お父様、お母様へ。カリナは遠くへ行きます。捜さないでください。本当にごめんなさい。こうするしか方法が思い浮かば』
おそらく両親に手紙を残そうとしたのだろう。
けれど気が変わったのか、文章は短い上に途切れていて最後まで書かれていなかった。
「な、なによ、これ!」
それを見たサマンサは顔を真っ青にしながら激しく動揺し、今にも卒倒しそうになっている。
「奥様、大丈夫ですか?!」
「と、とにかく旦那様に報告を」
フィオラは彼女の腕を支えてゆっくりと階段を下り、マルセルの部屋の扉をノックして中へと入った。
カリナはこっそりと朝早くにひとりで屋敷を出て行ったのだ。それで間違いないだろう。
書きかけの手紙を目にしたマルセルは、口をへの字に曲げて眉根を寄せた。
「あの子、行くあてなんかないはずよ。屋敷を出ていったいどこに……?」
「サマンサ、落ち着きなさい」
「落ち着いていられるわけないでしょう? もしかして死ぬつもりなんじゃ……。遠くへ行くって、そういうことじゃないかしら?」
最悪の結末を想像して恐怖が押し寄せたのか、サマンサは両手で顔を覆った。
元々カリナは天真爛漫な性格だ。フィオラの見立てだと、手紙を残そうとしたものの気持ちを上手に書けずにあきらめただけのように感じたけれど。
思いつめたカリナが自死を考える可能性はゼロではない。