【受賞作】命がけの身代わり婚~決死の覚悟で嫁ぎます~
「フィオラ、娘はなにか言っていなかったか? お前はあの子の侍女だろう。どうしてもっとちゃんと見ていないんだ」
「申し訳ございません」
フィオラはマルセルから当然のように叱責された。だが、理不尽だとは微塵も思わなかった。
「お嬢様を捜します。全員で力を合わせればきっと見つかるはずです」
「待て。街中を捜し回るというのか?」
「はい。あちこちで手がかりを掴んで辿っていけば……」
「そんなことができるか!!」
贔屓にしている店に立ち寄っているかもしれないので、方々に聞いて回れば情報を掴めると考えたのだが、マルセルは大声を上げて激高した。
叱られた理由がわからずに呆然としていると、隣にいるサマンサが眉根を寄せて口を挟んだ。
「カリナはあなたの娘です。心配ではないんですか?!」
「心配に決まっているだろう。だが、カリナとサイラス様の結婚はすでに民衆にも知られている。捜し回ったら、いなくなったと言いふらすようなものだ。サイラス様と結婚するのが嫌で逃げたと噂が立つじゃないか」
マルセルがそう言って頭を抱えた。
娘の安否よりも世間体を気にするのかとサマンサなら反論しそうなものだが、言葉が出てこないのかギュッと口を引き結んでいた。憂惧するのも無理はないと納得したのだろう。
「グスマン家のように、我々もどうなるかわからない」
実は昨年、サイラスの縁談がまとまりかけたことがあった。
妃の候補となったのはグスマン公爵家の令嬢だったが、辞退を申し出たという。
数ヶ月あとになって、皇帝は不敬罪でグスマン公爵の爵位剥奪と土地財産を没収した。表立っては立腹していないように見えても、内心は不愉快だったのだろう。
「申し訳ございません」
フィオラはマルセルから当然のように叱責された。だが、理不尽だとは微塵も思わなかった。
「お嬢様を捜します。全員で力を合わせればきっと見つかるはずです」
「待て。街中を捜し回るというのか?」
「はい。あちこちで手がかりを掴んで辿っていけば……」
「そんなことができるか!!」
贔屓にしている店に立ち寄っているかもしれないので、方々に聞いて回れば情報を掴めると考えたのだが、マルセルは大声を上げて激高した。
叱られた理由がわからずに呆然としていると、隣にいるサマンサが眉根を寄せて口を挟んだ。
「カリナはあなたの娘です。心配ではないんですか?!」
「心配に決まっているだろう。だが、カリナとサイラス様の結婚はすでに民衆にも知られている。捜し回ったら、いなくなったと言いふらすようなものだ。サイラス様と結婚するのが嫌で逃げたと噂が立つじゃないか」
マルセルがそう言って頭を抱えた。
娘の安否よりも世間体を気にするのかとサマンサなら反論しそうなものだが、言葉が出てこないのかギュッと口を引き結んでいた。憂惧するのも無理はないと納得したのだろう。
「グスマン家のように、我々もどうなるかわからない」
実は昨年、サイラスの縁談がまとまりかけたことがあった。
妃の候補となったのはグスマン公爵家の令嬢だったが、辞退を申し出たという。
数ヶ月あとになって、皇帝は不敬罪でグスマン公爵の爵位剥奪と土地財産を没収した。表立っては立腹していないように見えても、内心は不愉快だったのだろう。