【受賞作】命がけの身代わり婚~決死の覚悟で嫁ぎます~
「フィオラ、お前に頼みがある。カリナのことだ」
捜索に進展があったのかと期待を胸に、フィオラはテーブルに落としていた視線を上げてマルセルを見据えた。
「未だに手がかりが見つからない。裏の人間が捜せば、一日でなにかしらの情報を挙げてくるものなんだが」
「そうですか……」
「皇帝陛下に謁見する日が明後日に迫っている」
マルセルがそれまでに見つけなければと最初に言っていたのを思い出した。
だが、こんな状況ではそれは無理だろう。運よくカリナの居所がわかったとしても、無理やり連れ戻して皇帝の前で挨拶をさせるのはさすがにかわいそうだ。
自分がいなくなったあと、どんなに大騒ぎになるのか……彼女はすべて理解した上で家を出ている。
ある意味、第二皇子には絶対に嫁がないという覚悟の表れだ。しかし父親のマルセルはあきらめていないように見えた。
「フィオラが代わりに行ってくれないか?」
言われた意味がわからずにフィオラは呆然と固まってしまった。
平民で侍女の分際の自分が、皇帝を実見するだけでもありえないのに、いったいなにをしろと?
「すみません、おっしゃっている意味が……」
「君がカリナになるんだ。幸い背格好が似ている。髪の色もブロンドで同じだ。堅苦しさを嫌うカリナは皇族の方々が来られる社交界には出たことがないから、顔は知られていない」
「旦那様、お待ちください!」
不躾だとわかりつつも、主人であるマルセルの言葉を途中で遮った。
ようやく彼女の頭の中で『代わりに行く』という意味を理解し始めたのだが、同時に顔から一気に血の気が引いていった。
要するにマルセルは、自分をカリナの偽者に仕立てあげようとしているのだ。
カリナのドレスを着せてアクセサリーや化粧を施せばうまく成りすませると考えたのだと思うと、なんて恐ろしいことをと手が勝手に震えだした。
捜索に進展があったのかと期待を胸に、フィオラはテーブルに落としていた視線を上げてマルセルを見据えた。
「未だに手がかりが見つからない。裏の人間が捜せば、一日でなにかしらの情報を挙げてくるものなんだが」
「そうですか……」
「皇帝陛下に謁見する日が明後日に迫っている」
マルセルがそれまでに見つけなければと最初に言っていたのを思い出した。
だが、こんな状況ではそれは無理だろう。運よくカリナの居所がわかったとしても、無理やり連れ戻して皇帝の前で挨拶をさせるのはさすがにかわいそうだ。
自分がいなくなったあと、どんなに大騒ぎになるのか……彼女はすべて理解した上で家を出ている。
ある意味、第二皇子には絶対に嫁がないという覚悟の表れだ。しかし父親のマルセルはあきらめていないように見えた。
「フィオラが代わりに行ってくれないか?」
言われた意味がわからずにフィオラは呆然と固まってしまった。
平民で侍女の分際の自分が、皇帝を実見するだけでもありえないのに、いったいなにをしろと?
「すみません、おっしゃっている意味が……」
「君がカリナになるんだ。幸い背格好が似ている。髪の色もブロンドで同じだ。堅苦しさを嫌うカリナは皇族の方々が来られる社交界には出たことがないから、顔は知られていない」
「旦那様、お待ちください!」
不躾だとわかりつつも、主人であるマルセルの言葉を途中で遮った。
ようやく彼女の頭の中で『代わりに行く』という意味を理解し始めたのだが、同時に顔から一気に血の気が引いていった。
要するにマルセルは、自分をカリナの偽者に仕立てあげようとしているのだ。
カリナのドレスを着せてアクセサリーや化粧を施せばうまく成りすませると考えたのだと思うと、なんて恐ろしいことをと手が勝手に震えだした。