【受賞作】命がけの身代わり婚~決死の覚悟で嫁ぎます~
イルヴァはキラキラとした綺麗なものが好きだし、肌も髪も彼女のほうが美しい。
かわいい妹を少しでもよろこばせたいと思う反面、髪飾りを売れば薬代の足しなるというよこしまな考えが浮かんできて、フィオラは小さくかぶりを振った。
ありえない妄想を膨らませているだけなのだから、楽しいことだけを考えればいいのに、こんなときですらお金の心配をしてしまう自分が嫌になる。
フィオラは実家の家計を助けるためにブロムベルク家の使用人になった。支給される給料はそんなに多くはないが、そのほとんどを仕送りしている。
貧しい境遇にあるのは、決してフィオラの両親が商売下手だからでも散財しているからでもない。外国から取り寄せているイルヴァの薬が高額なのだ。
(イルヴァの病気が悪化していないか心配だわ。……あの薬は本当に効くのかしら?)
「お嬢様、これでいかがですか?」
編み込んだサイドの髪が見えるように後ろから鏡を向けると、カリナは正面を向いたまま満足げな顔でうなずいた。
「やっぱりフィオラは上手。今日は街に出て新しい髪飾りを買うからついて来てね」
「承知いたしました」
にこりと微笑みながら会釈をする。いつもの平和な朝の光景だったのだが……。
このあとブロムベルク家に天地を揺るがすほどの事件が起きた。
かわいい妹を少しでもよろこばせたいと思う反面、髪飾りを売れば薬代の足しなるというよこしまな考えが浮かんできて、フィオラは小さくかぶりを振った。
ありえない妄想を膨らませているだけなのだから、楽しいことだけを考えればいいのに、こんなときですらお金の心配をしてしまう自分が嫌になる。
フィオラは実家の家計を助けるためにブロムベルク家の使用人になった。支給される給料はそんなに多くはないが、そのほとんどを仕送りしている。
貧しい境遇にあるのは、決してフィオラの両親が商売下手だからでも散財しているからでもない。外国から取り寄せているイルヴァの薬が高額なのだ。
(イルヴァの病気が悪化していないか心配だわ。……あの薬は本当に効くのかしら?)
「お嬢様、これでいかがですか?」
編み込んだサイドの髪が見えるように後ろから鏡を向けると、カリナは正面を向いたまま満足げな顔でうなずいた。
「やっぱりフィオラは上手。今日は街に出て新しい髪飾りを買うからついて来てね」
「承知いたしました」
にこりと微笑みながら会釈をする。いつもの平和な朝の光景だったのだが……。
このあとブロムベルク家に天地を揺るがすほどの事件が起きた。