【受賞作】命がけの身代わり婚~決死の覚悟で嫁ぎます~
それぞれ支度を済ませたサイラスとフィオラは馬車に乗り、湖のほとりまでやってきた。
水面が太陽の光をキラキラと浴びていてとても美しい。
辺りには誰もいなかったので、供の使用人を馬車のところに待機させ、ふたりきりで水辺のほうまで歩いていく。
「綺麗だな」
「はい。空気が澄んでいて癒されますね」
「籠の鳥みたいな暮らしをしているから、外に出ると気持ちいいだろう」
「サイラス様がおやさしいので、今の暮らしに不満などありませんわ」
歩みを止め、真剣な面持ちで言葉を紡ぐフィオラを見て、サイラスは「冗談を真に受けるな」と笑い飛ばした。
だが、思い詰めたフィオラに笑顔は戻らない。
「あの……先ほどはありがとうございました」
「皇后の茶会には今後も出なくていい」
サイラスがフィオラを気遣っているのは間違いないが、皇后から意地悪を受けること以外の別の心配も含まれている気がしてならなかった。
「ピアノ、弾けないんだよな?」
この質問にうなずいてしまったら、自分が偽者だと認めたも同然だ。
本当ならなんでもいいから言い訳をしてごまかさなければいけないけれど、フィオラはそれができなかった。
きっともうバレているだろう。なにもかもわかっていて親身になってくれるサイラスにウソを重ねるのがつらい。観念したフィオラは視線を下げつつ首を縦に振った。
「も、申し訳ありません。とんでもない大罪を犯しているのは重々承知です。私は……斬首刑ですね」
「安心しろ。俺は君の味方だ」
震える声を遮ってサイラスが肩を抱き寄せた。
皇帝や皇族たちを謀っているというのに、こんな自分になぜ味方をしてくれるのか、フィオラは理解できずに首をかしげた。
水面が太陽の光をキラキラと浴びていてとても美しい。
辺りには誰もいなかったので、供の使用人を馬車のところに待機させ、ふたりきりで水辺のほうまで歩いていく。
「綺麗だな」
「はい。空気が澄んでいて癒されますね」
「籠の鳥みたいな暮らしをしているから、外に出ると気持ちいいだろう」
「サイラス様がおやさしいので、今の暮らしに不満などありませんわ」
歩みを止め、真剣な面持ちで言葉を紡ぐフィオラを見て、サイラスは「冗談を真に受けるな」と笑い飛ばした。
だが、思い詰めたフィオラに笑顔は戻らない。
「あの……先ほどはありがとうございました」
「皇后の茶会には今後も出なくていい」
サイラスがフィオラを気遣っているのは間違いないが、皇后から意地悪を受けること以外の別の心配も含まれている気がしてならなかった。
「ピアノ、弾けないんだよな?」
この質問にうなずいてしまったら、自分が偽者だと認めたも同然だ。
本当ならなんでもいいから言い訳をしてごまかさなければいけないけれど、フィオラはそれができなかった。
きっともうバレているだろう。なにもかもわかっていて親身になってくれるサイラスにウソを重ねるのがつらい。観念したフィオラは視線を下げつつ首を縦に振った。
「も、申し訳ありません。とんでもない大罪を犯しているのは重々承知です。私は……斬首刑ですね」
「安心しろ。俺は君の味方だ」
震える声を遮ってサイラスが肩を抱き寄せた。
皇帝や皇族たちを謀っているというのに、こんな自分になぜ味方をしてくれるのか、フィオラは理解できずに首をかしげた。