【受賞作】命がけの身代わり婚~決死の覚悟で嫁ぎます~
「じゃあ、次は俺の番だな」
ボソリと紡がれた言葉の意味がわからなくてポカンとしていると、サイラスがおもむろに後頭部で結ばれている紐をするりと解いた。
その瞬間、彼の左半分の顔を覆っていたシルバーの仮面が重力に従ってずり落ちる。
「あっ」
フィオラは思わず声を上げ、辺りをキョロキョロと見回した。
こんなところで仮面を取って誰かに見られたらどうするのかと、ひどくあわてたのだ。
「大丈夫。誰もいない。こっちを向いて、フィオラ」
宝石のように澄んだ瞳は、左目も健在だった。
なんという美しい顔だちなのだろう。眉目秀麗を絵に描いたようなサイラスを目にしたフィオラはぼうっと見惚れてしまう。
「え、あの……傷が……」
「うん。ないよな?」
失礼なのは重々承知の上だったが、フィオラは彼の左頬をまじまじと見つめた。
そこには痣や傷痕の類はひとつもなく、右側と同じようにスベスベとした美しい肌の持ち主だという事実が彼女の頭を混乱させる。
「時が経って、痕が綺麗に消えたのですか?」
「いや。俺は顔に傷を負ったことはない。……わからないか?」
「ま、まさか」
意味深に顔を突き出しておどける彼とは反対に、フィオラは驚いて両手で口元を覆った。
「あなたは、誰なのですか?」
だけどそんなはずはない。自分と同じように、彼が第二皇子であるサイラスに成りすましているなんて。
ボソリと紡がれた言葉の意味がわからなくてポカンとしていると、サイラスがおもむろに後頭部で結ばれている紐をするりと解いた。
その瞬間、彼の左半分の顔を覆っていたシルバーの仮面が重力に従ってずり落ちる。
「あっ」
フィオラは思わず声を上げ、辺りをキョロキョロと見回した。
こんなところで仮面を取って誰かに見られたらどうするのかと、ひどくあわてたのだ。
「大丈夫。誰もいない。こっちを向いて、フィオラ」
宝石のように澄んだ瞳は、左目も健在だった。
なんという美しい顔だちなのだろう。眉目秀麗を絵に描いたようなサイラスを目にしたフィオラはぼうっと見惚れてしまう。
「え、あの……傷が……」
「うん。ないよな?」
失礼なのは重々承知の上だったが、フィオラは彼の左頬をまじまじと見つめた。
そこには痣や傷痕の類はひとつもなく、右側と同じようにスベスベとした美しい肌の持ち主だという事実が彼女の頭を混乱させる。
「時が経って、痕が綺麗に消えたのですか?」
「いや。俺は顔に傷を負ったことはない。……わからないか?」
「ま、まさか」
意味深に顔を突き出しておどける彼とは反対に、フィオラは驚いて両手で口元を覆った。
「あなたは、誰なのですか?」
だけどそんなはずはない。自分と同じように、彼が第二皇子であるサイラスに成りすましているなんて。