【受賞作】命がけの身代わり婚~決死の覚悟で嫁ぎます~
「近々、皇帝陛下にお目通りくださいませ」
「なぜだ。俺にはなにもできないぞ」
幽閉されているミシュロを助けるように皇后から頼まれているのかと、スヴァンテは一瞬そう思った。
関係ない自分が余計な口出しや手出しなどできるはずがないのだから、頼みにくること自体が的外れだろう。
「ミシュロ殿下は皇太子の座を廃されます。そうなると次の皇太子はサイラス殿下です」
「はっ!」
スヴァンテは目を丸くしたが、コーベットの言う通りだった。
世嗣ぎは正妃が産んだ男子とこの国では決められているけれど、いない場合は側妃の子に皇位継承権が与えられる。
皇后の子どもはミシュロただひとり。順番からいけばサイラスが皇太子の称号を受け継ぐことになる。
「しかし……俺は皇后様に疎まれている」
「たとえおふたりの折り合いが悪くても、皇太子としての職務に支障はきたしませんよ」
「それに、俺も妻もこのローズ宮での暮らしを気に入っている」
「そうなのですね。では、この先は私ではなく皇帝陛下とお話くださいませ」
柔和な笑みをたたえるコーベットに、スヴァンテは太刀打ちできないと判断した。
今はとりあえずわかったと承諾しつつ、早急に手立てを考えるしかない。
コーベットが帰ったあと、スヴァンテは自室にこもってひとりで頭を痛めていた。
こんな状況になった今、皇帝が次になにを言いだすか想像がつかない。
カリナに成りすましているフィオラとふたりでクリスタル宮に移ることになれば、皇后とのあいだでなにかといざこざが起きるのは目に見えている。
それはなにがなんでも避けなければ……。
いや、その前に……スヴァンテは突然冷静になり、自分の立場を考えた。
皇太子の椅子に偽者の自分が堂々と座るわけにはいかないだろう。皇太子妃の席も同じく。
そして、本物のサイラスはまだこのことを知らないでいる。
すぐに耳に入れなければとスヴァンテは即座に手紙をしたため、サイラスの元へ届けるようにと使用人に馬を走らせた。
連絡は誰にも怪しまれないように一般的な郵便を使ってきたが、今は緊急事態なので仕方がない。
「なぜだ。俺にはなにもできないぞ」
幽閉されているミシュロを助けるように皇后から頼まれているのかと、スヴァンテは一瞬そう思った。
関係ない自分が余計な口出しや手出しなどできるはずがないのだから、頼みにくること自体が的外れだろう。
「ミシュロ殿下は皇太子の座を廃されます。そうなると次の皇太子はサイラス殿下です」
「はっ!」
スヴァンテは目を丸くしたが、コーベットの言う通りだった。
世嗣ぎは正妃が産んだ男子とこの国では決められているけれど、いない場合は側妃の子に皇位継承権が与えられる。
皇后の子どもはミシュロただひとり。順番からいけばサイラスが皇太子の称号を受け継ぐことになる。
「しかし……俺は皇后様に疎まれている」
「たとえおふたりの折り合いが悪くても、皇太子としての職務に支障はきたしませんよ」
「それに、俺も妻もこのローズ宮での暮らしを気に入っている」
「そうなのですね。では、この先は私ではなく皇帝陛下とお話くださいませ」
柔和な笑みをたたえるコーベットに、スヴァンテは太刀打ちできないと判断した。
今はとりあえずわかったと承諾しつつ、早急に手立てを考えるしかない。
コーベットが帰ったあと、スヴァンテは自室にこもってひとりで頭を痛めていた。
こんな状況になった今、皇帝が次になにを言いだすか想像がつかない。
カリナに成りすましているフィオラとふたりでクリスタル宮に移ることになれば、皇后とのあいだでなにかといざこざが起きるのは目に見えている。
それはなにがなんでも避けなければ……。
いや、その前に……スヴァンテは突然冷静になり、自分の立場を考えた。
皇太子の椅子に偽者の自分が堂々と座るわけにはいかないだろう。皇太子妃の席も同じく。
そして、本物のサイラスはまだこのことを知らないでいる。
すぐに耳に入れなければとスヴァンテは即座に手紙をしたため、サイラスの元へ届けるようにと使用人に馬を走らせた。
連絡は誰にも怪しまれないように一般的な郵便を使ってきたが、今は緊急事態なので仕方がない。