【受賞作】命がけの身代わり婚~決死の覚悟で嫁ぎます~
この国の第二皇子であるサイラス・コーネルに関して、巷では悪い噂ばかりが流れている。
幼少のころから粗暴で品がなく、変わった発言ばかりする異端児なのだとか。
どこまでその噂が本当なのか、王宮の外に住む者たちにはわからない。
けれど少なくともカリナとサマンサはそれを真に受けているので、そんな男との結婚はこの世の地獄だと言わんばかりに嫌がっているのだ。
フィオラはキッチンでハーブティーを準備し、かける言葉を見つけられないままカリナの部屋の扉をノックした。
「お嬢様、失礼致します」
扉に鍵はかかっておらず、カリナはベッドの上でお気に入りのクッションを抱きしめながら泣いていた。
しゃくりあげてはいないが、少し時間が経った今でも涙は止まらないようだ。
「お茶をお持ちいたしました」
茶器の乗ったトレイをテーブルに置くと、カリナは手の甲で涙を拭いながらベッドから降りて椅子に座り直した。
ずっと泣いているせいで目が充血していて真っ赤だ。瞼も腫れている。
「結婚の話……聞いた?」
「はい。少しだけ」
「私がどれだけ嫌だと訴えても無駄なんだって。お父様があんなに残忍な人だって知らなかったわ」
恨み節を言い募ったカリナがカップを手に取ってハーブティーを口にした。
少しでも気分が落ち着いてくれればとフィオラは祈るばかりだ。
「そろそろ縁談の話は来るかもって覚悟はしてたけど、第二皇子だけは絶対に嫌。最悪!」
「旦那様もきっと身を切られるような気持ちでお伝えされたのだと思いますよ」
「フィオラ、どっちの味方なの?!」
「すみません。出過ぎたことを申しました」
カリナがムッとして唇を突き出したのを見て、フィオラはあわてて謝った。
幼少のころから粗暴で品がなく、変わった発言ばかりする異端児なのだとか。
どこまでその噂が本当なのか、王宮の外に住む者たちにはわからない。
けれど少なくともカリナとサマンサはそれを真に受けているので、そんな男との結婚はこの世の地獄だと言わんばかりに嫌がっているのだ。
フィオラはキッチンでハーブティーを準備し、かける言葉を見つけられないままカリナの部屋の扉をノックした。
「お嬢様、失礼致します」
扉に鍵はかかっておらず、カリナはベッドの上でお気に入りのクッションを抱きしめながら泣いていた。
しゃくりあげてはいないが、少し時間が経った今でも涙は止まらないようだ。
「お茶をお持ちいたしました」
茶器の乗ったトレイをテーブルに置くと、カリナは手の甲で涙を拭いながらベッドから降りて椅子に座り直した。
ずっと泣いているせいで目が充血していて真っ赤だ。瞼も腫れている。
「結婚の話……聞いた?」
「はい。少しだけ」
「私がどれだけ嫌だと訴えても無駄なんだって。お父様があんなに残忍な人だって知らなかったわ」
恨み節を言い募ったカリナがカップを手に取ってハーブティーを口にした。
少しでも気分が落ち着いてくれればとフィオラは祈るばかりだ。
「そろそろ縁談の話は来るかもって覚悟はしてたけど、第二皇子だけは絶対に嫌。最悪!」
「旦那様もきっと身を切られるような気持ちでお伝えされたのだと思いますよ」
「フィオラ、どっちの味方なの?!」
「すみません。出過ぎたことを申しました」
カリナがムッとして唇を突き出したのを見て、フィオラはあわてて謝った。