【受賞作】命がけの身代わり婚~決死の覚悟で嫁ぎます~
このあと、使用人たちのあいだでもカリナの結婚話でざわついていた。
第二皇子との婚姻はほぼ間違いなく決まる。そうなるとカリナがひとりで嫁ぐのは不安なので、この家の使用人を何人か連れていくことになる。
フィオラはカリナ専属の侍女だ。きっと自分は含まれるのだろうなと、口には出さずとも確信していた。
いつ告げられてもいいように構えていたけれど話はなく、そのまま半月が経過した。
マルセルは公務があるので通常どおり王宮へ通っていたが、カリナとサマンサはふさぎ込んでいて、ブロムベルク家はこのところ火が消えたように静かだ。
気が進まないものの、サマンサは結婚する娘に持たせようと細々したものを買い揃えて準備を始めている。新しいドレスもいくつか注文していた。
けれど肝心のカリナは未だに受け入れられないようで、一日中ずっと部屋に閉じこもっている。
魂が抜けたような状態で本当に輿入れなどできるのだろうかと、使用人たちはみな心配していた。
そんな中、ふたりの結婚式は一ヶ月後に王宮内の教会で執り行うと知らせがあった。ずいぶん急なスケジュールだ。
皇太子の結婚のときは貴族を三百人も招待して盛大なパーティーが開催されたが、そのときとは違って簡単な式しか行わず、人数も最小限でとのこと。
いくら世嗣ぎではないとはいえ、サイラスは皇帝の次男なのに儀式としてはあまりにも簡素すぎる。
これでは公爵の爵位を賜っているブロムベルク家が世間から軽んじられると、サマンサが憤慨していた。
「お嬢様、紅茶をお持ちいたしました」
フィオラは椅子に座ってぼうっとするカリナのもとへ湯気の立つ温かい紅茶を届けた。
高い窓から心地よい陽光が差し込んでいるけれど、カリナの心は晴れないようだ。
「私の実家から送られてきたハチミツを入れましょう。お好きですよね」
「……」
第二皇子との婚姻はほぼ間違いなく決まる。そうなるとカリナがひとりで嫁ぐのは不安なので、この家の使用人を何人か連れていくことになる。
フィオラはカリナ専属の侍女だ。きっと自分は含まれるのだろうなと、口には出さずとも確信していた。
いつ告げられてもいいように構えていたけれど話はなく、そのまま半月が経過した。
マルセルは公務があるので通常どおり王宮へ通っていたが、カリナとサマンサはふさぎ込んでいて、ブロムベルク家はこのところ火が消えたように静かだ。
気が進まないものの、サマンサは結婚する娘に持たせようと細々したものを買い揃えて準備を始めている。新しいドレスもいくつか注文していた。
けれど肝心のカリナは未だに受け入れられないようで、一日中ずっと部屋に閉じこもっている。
魂が抜けたような状態で本当に輿入れなどできるのだろうかと、使用人たちはみな心配していた。
そんな中、ふたりの結婚式は一ヶ月後に王宮内の教会で執り行うと知らせがあった。ずいぶん急なスケジュールだ。
皇太子の結婚のときは貴族を三百人も招待して盛大なパーティーが開催されたが、そのときとは違って簡単な式しか行わず、人数も最小限でとのこと。
いくら世嗣ぎではないとはいえ、サイラスは皇帝の次男なのに儀式としてはあまりにも簡素すぎる。
これでは公爵の爵位を賜っているブロムベルク家が世間から軽んじられると、サマンサが憤慨していた。
「お嬢様、紅茶をお持ちいたしました」
フィオラは椅子に座ってぼうっとするカリナのもとへ湯気の立つ温かい紅茶を届けた。
高い窓から心地よい陽光が差し込んでいるけれど、カリナの心は晴れないようだ。
「私の実家から送られてきたハチミツを入れましょう。お好きですよね」
「……」